行政書士の業務内容とは具体的にどのようなものなのか、調べ始めたものの、その種類の多さに戸惑っていませんか。
「業務は1万種類以上」と聞くと、かえって何が専門なのか分かりにくく感じますよね。
実は私自身、行政書士補助者として約1年半、実務に携わる中で「この仕事の全体像が掴みにくい」と感じていました。
もし、あなたも同じような疑問を抱え、合格後の自分をリアルに描きたいと考えているのであれば、ぜひこの記事を読み進めてみてください。
この記事では、実務経験から見えてきた視点をもとに、行政書士の膨大な業務内容を3つの種類に分かりやすく分類します。
「できること」と「できないこと」を明確にし、AI時代でも活躍し続けるための将来性まで、具体例を交えながらお伝えします。
読み終える頃には、あなたの漠然とした興味は、より確かな目標へと変わっているはずです。
行政書士に挑戦するかを判断するために、行政書士の業務内容を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
行政書士の業務内容は大きく分けて3種類

行政書士が取り扱う業務は1万種類以上にも上るといわれ、その仕事内容は多岐にわたります。
「具体的にどんな仕事をするの?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、その業務は大きく次の3つに分類できます。
これらは、私たちの暮らしやビジネスに深く関わる手続きです。
ここからは、それぞれの業務内容を一つずつ見ていきましょう。
官公署への許認可申請
行政書士の業務の柱となるのが、官公署への許認可申請です。
これは、個人や法人が新しい事業を始めたり、特定の活動を行ったりする際に、国や地方公共団体から許可を得るための手続きを代行します。
許認可の種類は1万以上あるといわれ、その手続きは非常に複雑です。
そのため、専門的な知識を持つ行政書士が、依頼者に代わって膨大な書類を作成し、申請手続きを進めます。
この許認可申請の代行は、法律で定められた行政書士の独占業務の一つです。
具体的には、以下のような許認可申請を取り扱います。
- 飲食店や建設業の営業許可
- 会社やNPO法人などの設立手続き
- 介護事業所の開業に関する届出
- 外国人の在留資格や帰化の申請
- 農地を他の用途で使うための許可
行政書士は暮らしやビジネスに欠かせない手続きの専門家といえるでしょう。
複雑な申請を専門家に任せることで、依頼者は本来の事業や活動に専念できます。
権利義務に関する書類作成
行政書士の仕事は、官公署への手続きに限りません。
人々の権利や義務に関わる書類の作成も、業務の柱の一つです。
これは、個人間や企業との間で交わされる約束事を法的に整った形で文書にし、将来のトラブルを未然に防ぐための仕事です。
「予防法務の専門家」として、暮らしやビジネスのさまざまな場面でその知識を活かします。
例えば、以下のような書類の作成を依頼できます。
- 遺産分割協議書や遺言書の作成支援
- 土地や建物の賃貸借契約書
- 金銭の貸し借りに関する契約書
- 離婚時の取り決めを記す協議書
- クーリングオフなどで用いる内容証明郵便
行政書士は「街の法律家」として、私たちの身近な法律問題をサポートする役割を担っています。
事実証明に関する書類作成
行政書士の業務の3つ目の柱が、事実証明に関する書類作成です。
これは、社会生活の中で起きた出来事や存在する事実を、客観的な文書として証明する仕事です。
企業活動や個人の生活では、特定の事実を公的に証明する書類が必要になる場面があります。
行政書士は依頼を受けて下記のような書類を作成し、その事実を明確にします。
- 会計の事実を記録する会計帳簿
- 株主総会などの議事録
- 自動車の登録や変更に関する書類
- 実地調査に基づく各種図面類
行政書士は社会の様々な活動を記録し、証明する役割も担っているのです。
まずは、身の回りにある公的な証明書類がどのようなものか調べてみましょう。
行政書士ができること・できないこと

「街の法律家」として頼りになる行政書士ですが、法律によって業務の範囲が決められています。
そのため、他の専門家、例えば弁護士や司法書士でなければ扱えない仕事もあります。
ここからは、行政書士ができること・できないことを具体的に確認していきましょう。
行政書士ができること
行政書士は、暮らしやビジネスのさまざまな場面で私たちの活動を法的にサポートします。
その業務範囲は広く、主に以下のような業務を通じて、個人や企業の活動を支えています。
ここからは、それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
事業の開始を支援
行政書士は、新しい事業を始める際のさまざまな法的手続きをサポートします。
例えば、飲食店を開業するには保健所の営業許可が、建設業を営むには建設業許可が必要です。
このような官公署への複雑な許認可申請は、行政書士が最も得意とする分野の一つです。
また、株式会社やNPO法人といった法人を設立する際の手続きも、行政書士の業務範囲と言えるでしょう。
事業で活用できる補助金や助成金の申請、外国人を雇用する際に必要な在留資格の取得など、ビジネスのスタートアップ期に求められる多岐にわたる手続きを支援します。
専門的な手続きを行政書士に任せることで、起業家は安心して本来の事業準備に専念できるでしょう。
相続や契約に関する書類作成
行政書士は、相続や契約といった個人の生活に深く関わる書類作成も得意としています。
これは、法的に整った文書の作成により、将来起こりうるトラブルを未然に防ぐための業務です。
具体的にどのような書類を扱うのか、分野ごとに見ていきましょう。
| 分野 | 主な書類の例 |
|---|---|
| 相続関連 | ・遺産分割協議書 ・遺言書作成の支援 |
| 契約関連 | ・土地や建物の賃貸借契約書 ・お金の貸し借りに関する契約書 |
| 家族関連 | ・離婚時の条件をまとめる協議書 ・任意後見契約書 |
| その他 | ・クーリングオフで使う内容証明郵便 ・示談書 |
ただし、すべての手続きを行政書士だけで完結できるわけではありません。
例えば、相続した不動産の名義変更(登記)は司法書士の業務です。
このように行政書士は、身近な法律問題の最初の相談窓口として、必要に応じて他の専門家へつなぐ橋渡し役も担っています。
法人設立や運営に関わる手続きを代行
行政書士は、法人設立からその後の運営まで、事業のライフサイクル全体に関わる法的手続きを代行します。
単に会社を作る手続きだけではなく、事業を継続していく上で発生するさまざまな書類作成も業務範囲となります。
法人の設立時には、株式会社やNPO法人といった組織の種類に応じた手続きが必要です。
行政書士は、その土台となる定款の作成から官公署への申請までをサポートします。
また、法人の運営が始まると、事業に必要な許認可の更新や、会計帳簿・議事録の作成、補助金の申請など、さまざまな場面で法的な書類が求められます。
行政書士はこうした書類作成を通じて、企業の継続的な活動を支えてくれるため、経営者にとって心強いものといえるでしょう。
行政書士ができないこと
幅広い業務を扱う行政書士ですが、法律により他の専門家の独占業務とされている仕事は行えません。
特に、紛争の解決や登記、税務に関する業務は、それぞれ弁護士や司法書士、税理士の専門分野となります。
具体的にどのような業務が範囲外となるのか、代表的なものを確認しておきましょう。
上記業務については、行政書士が相談の窓口となり、適切な専門家を紹介してくれることもあります。
裁判や交渉の代理
行政書士は、裁判や交渉の代理人になることはできません。
これは、法律によって弁護士の独占業務と定められているからです。
行政書士の役割は、あくまでトラブルを未然に防ぐための書類作成にあります。
もし、依頼された業務の途中で当事者間の争い(紛争)が発生した場合、行政書士はそこから先の業務を行うことができません。
具体的には、以下のような業務は行政書士の範囲外です。
- 遺産分割に関する相続人間の話し合いの代理
- 交通事故の示談交渉
- 離婚に関する条件交渉
上記のような業務は、いずれも相手方との交渉や法的な判断が求められるため、弁護士の領域です。
行政書士は相談を受けた際、内容に応じて弁護士などの専門家へつなぐ役割を担います。
不動産や会社の登記申請
行政書士は、不動産や会社の登記申請を代行することはできません。
「登記」に関する手続きは、司法書士の独占業務と法律で定められています。
例えば、相続によって不動産を受け継いだ場合、その名義変更(所有権移転登記)は法務局で行いますが、この手続きは司法書士が専門です。
行政書士は、その前段階である遺産分割協議書の作成などを担当します。
また、会社を設立する際も同様です。
行政書士は設立に必要な定款の作成などを担いますが、法務局への設立登記の申請は司法書士の業務範囲となります。
このように業務が分かれているため、多くの行政書士は司法書士と連携しています。
最初の相談窓口として行政書士が対応し、登記が必要な場面では司法書士へ引き継ぐことで、依頼者をサポートしています。
税務申告の代理
行政書士は、税務申告の代行はできません。
確定申告や相続税の申告といった税金に関する手続きは、税理士の独占業務と法律で定められているからです。
例えば、会社の決算書を行政書士が作成することは可能ですが、その書類を基にした法人税の申告は税理士の業務です。
会計書類の作成と、それを用いた税務申告は別の手続きとして区別されています。
相続の場面でも同様で、遺産分割協議書の作成は行政書士が担い、相続税の申告が必要な場合は税理士が担当します。
行政書士を目指す人に必要なスキル

行政書士として活躍するには、法律の知識だけでは十分ではありません。
依頼者の話を正確に聞き取り、膨大で複雑な書類をミスなく作成するなど、実務を遂行するためのスキルも同じくらい求められます。
ここでは、特に行政書士を目指す上で身につけておきたい3つのスキルを紹介します。
これらのスキルは、試験合格後の実務で必ず役立ってくれるでしょう。
事務処理能力
行政書士には、正確かつ迅速な事務処理能力が必要です。
なぜなら、行政書士の業務は膨大な量の書類作成と、複雑な手続きの管理が中心となるからです。
一つのミスが依頼者の事業計画に影響を及ぼす場合もあるため、細部にまで注意を払う緻密さが求められます。
具体的には、以下のような場面でこの能力が活かされます。
- 複数の許認可申請の進捗管理
- 申請書類と膨大な添付書類の整理
- 依頼者情報の正確なデータ入力
- 厳格な提出期限のスケジュール管理
依頼者から預かった個人情報や企業の機密情報を適切に管理する能力も、このスキルに含まれるでしょう。
まずは、身の回りの書類整理やスケジュール管理から意識してみてください。
傾聴力
行政書士には、依頼者の話を深く理解するための傾聴力が求められます。
業務の出発点は、依頼者が何に困り、何を望んでいるのかを正確に把握する必要があるからです。
依頼者の中には、ご自身の状況をうまく言葉にできない方もいます。
行政書士はそうした言葉の背景にあるニーズを汲み取り、法的な課題を整理しなくてはなりません。
具体的には、以下のような相談で真価を発揮します。
- 相続に関する家族間の複雑な想い
- 事業の将来に対する経営者の不安
- 離婚協議における感情的な悩み
手続きの背景にある想いに耳を傾ける姿勢が、深い信頼関係を築くでしょう。
日頃から相手の話の真意を考える癖をつけてみてはいかがでしょうか。
知的好奇心
行政書士の業務を続ける上で、新しい知識を学び続ける知的好奇心は欠かせません。
法律や制度は社会の変化に合わせて頻繁に改正されるため、常に最新の情報を追いかける必要があるからです。
行政書士が扱う業務範囲は1万種類以上ともいわれ、依頼者の相談内容は多岐にわたります。
例えば、以下のような新しい分野への探求心が、専門性を高める武器になるでしょう。
- ドローン飛行許可や民泊経営の許認可
- IT技術を活用した電子定款の作成
- 最新の補助金や助成金制度の調査
- 国際情勢の変化に伴う在留資格の動向
- AI生成物の著作権に関する相談
依頼者の多様なニーズに応えるためにも、未知の分野を面白がって探求する姿勢が求められます。まずは、関心のある分野のニュースを日々チェックすることから始めてみましょう。
行政書士業務の将来性

AIの発展などにより、一部の事務作業は自動化される時代になりました。
「行政書士の仕事は将来なくなるのでは?」と不安に思う方もいるかもしれません。
しかし、行政書士の業務には、未来に向けてむしろ需要の拡大が見込まれる側面がいくつもあります。
ここでは、行政書士の将来性を考える上で、特に注目すべき3つのポイントを紹介します。
これからの時代に、行政書士がどのように社会で役割を果たしていくのかを見ていきましょう。
AIには代替できない判断業務
行政書士の業務には、AIには代替できない高度な判断が求められる領域が多くあります。
なぜなら、AIと人間とでは得意な業務が分かれており、それぞれが役割を分担していくからです。
行政書士の真価は、法律の知識と依頼者の状況を掛け合わせ、最適な解決策を導き出す点にあるといえます。
具体的には、AIと行政書士(人間)の得意な業務は、以下のように整理できます。
| AIが得意な業務 | 行政書士(人間)が得意な業務 | |
| 役割 | ・情報処理 ・定型作業の支援 | ・総合的な判断 ・意思疎通 |
| 具体例 | ・過去の法令や判例の検索 ・申請書類の草案作成 ・各種データの入力・整理 | ・依頼者の感情に寄り添う相談業務 ・事業の未来を考えるコンサルティング ・役所の担当者との折衝や調整 |
定型的な業務をAIに任せて効率化すれば、行政書士は人間にしかできない、より専門性の高い業務に集中できます。
まずは、どの業務でAIを活用できるのかを検討してみましょう。
複雑化する社会が生み出す新たな許認可
社会が複雑になるにつれて、新しいルールや制度が生まれ、行政書士が活躍する新たな分野が生まれています。
なぜなら、これまでにない新しいビジネスや社会問題に対応するため、法的な手続きも常に更新されていくからです。
社会の変化を敏感に捉えることが、専門家としての活躍の場を広げます。
近年では、以下のような分野で新しい許認可の需要が高まっています。
- ドローン飛行や民泊経営に関する許可
- 脱炭素社会に向けた環境関連の届出
- 外国人材の受け入れに伴う在留資格
ご自身が関心を持つ社会問題が、将来の専門分野に繋がることもあります。
まずは、一つのニュースから関連する法律や手続きを調べてみてはいかがでしょうか。
他士業との連携によるサービスの拡大
行政書士は、他の専門家と連携すれば、提供できるサービスの幅を大きく広げられます。
なぜなら、依頼者が抱える悩みは、行政書士の業務範囲だけでは解決できない場合があるからです。
各分野の専門家とチームを組むことで、依頼者の課題にワンストップで応えられるようになります。
例えば、以下のような形で各専門家と役割を分担できます。
| 連携する専門家 | 連携できる業務の具体例 |
| 司法書士 | ・会社設立時の登記申請 ・相続による不動産の名義変更 |
| 税理士 | ・法人設立後の税務顧問 ・相続税の申告手続き |
| 社会保険労務士 | ・建設業許可と社会保険の加入手続き ・従業員の雇用に関する助成金申請 |
| 弁護士 | ・契約書作成(予防) ・紛争解決(事後) ・離婚協議書の作成支援と交渉代理 |
ただし、連携の前提として、各士業が持つ「独占業務」を正しく理解しなくてはなりません。
資格のない者が他士業の独占業務を行うことは、法律で厳しく禁じられています。
専門家としての責任を果たすためにも、まずは自分が「できること」と「できないこと」の境界線を明確に把握しておきましょう。
まとめ
この記事では、「行政書士はどんな仕事をするのか」などの疑問に答えるため、3つの主要業務、実務で求められるスキル、そしてその将来性について解説しました。
許認可申請から身近な契約書の作成まで、行政書士の業務が暮らしやビジネスに深く関わっていることをご理解いただけたのではないでしょうか。
AI時代においても、人間ならではの判断力や他士業との連携によって、専門性がさらに高まることもお伝えしました。
ここで得た知識は、資格取得後の働き方を具体的にイメージするための指針となり、あなたの挑戦をより確かな目標へと変えていきます。


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